シンポジウム「障害のある人との表現活動をもっと身近に」

みなぶたフォーラムvol.1

2021年12月25日(土)
14:00~16:10
フェニックス・プラザ(映像ホール)



文:荒川裕子

今回のシンポジウムは、これまで福井芸術・文化フォーラムが行ってきた「障害のある人の表現活動」をテーマにおいたトークイベント、映画会、てつがくカフェ、ワークショップ、舞台公演等を通して、課題と感じている「担い手不足」に対しアプローチを探る目的で開催しました。

ゲストの川名洋行さんとの出会いは、2018年にさかのぼります。岐阜県可児市にある可児市文化創造センターアーラの主催事業『みんなのディスコ』に「みんなで舞台に立とうを広げる会(通称みなぶた)」が参加したことがきっかけです。進行やパフォーマンスを務めていた川名さんの圧倒的なパワーとやさしさに「みなぶた」キャストはすぐにファンになってしまいました。2年後の舞台公演にゲストとしてお招きしていましたが、コロナの影響により公演が延期。舞台公演のゲストという形ではなくなりましたが、川名さんの多岐にわたる活動や思いにふれ、今回2日間にわたるフォーラムを企画し、福井に来ていただきました。

川名さんの活動のひとつに、施設の利用者の方や職員さんとの音楽活動があります(4施設で展開)。福井県内でも音楽活動を実施している福祉サービス事業所はありますが、川名さんの活動に衝撃と憧れを抱いてしまうのは、「アーティストとしてステージに立つ」という確固たるポリシーがあることです。やりたいからやる。どうせやるなら魅せ方や表現力を磨く。すると共感・共鳴する人々が現れる。たとえ困難なことが起こっても、活動を共にしている仲間の力で乗り越えることができる。心の底から表現したいという思いは、生きているという実感なのかもしれません。また、活動を「ひらく」ことで、様々な縁が次々と訪れます。とあるバンドフェスに出場した際のエピソードがお話の中にありましたが、人は本気にふれれば動かされてしまう。健常者も障害者も関係ないということがひしひしと伝わってきました。

表に出ていくことを厭わず続けていくことで、自ずと道は開かれる。そしてそのようなことは「みなぶた」でも起きています。
「みなぶた」の舞台公演は、2022年の4月で17回目となります。舞台に立つという特別感を味わったキャストは、舞台の魅力にとりつかれ、もっとうまくなりたい、もっと見てもらいたい、という欲が出てきます。魂をぶつけたステージは観客の心を動かし、新たな出会いにつながっていきます。ここ数年はありがたいことに、外部公演のオファーが増えてきています。

“表現したくてたまらない人たち”のエネルギーは、障害のある人ががんばっているという一種の固定概念を覆します。スタッフや家族等、関わる人も本気で向き合うことで、みんなが舞台を通して成長していくのです。その好循環は、年々感じているところです。
一方で「表現をさせられる」という方向に向いた時、やりたいと心から思わない状態では、誰も幸せではないだろうと感じます。「やらないと損」のように、損得で動くことほど、悲惨なことはないでしょう。

障害のある人の表現活動を通して、「表現すること」について問うようになりました。2014年から障害のある人の表現活動をテーマにおいた企画を行うようになりましたが、今回のフォーラムを通して、相手に真剣に向き合うことの大切さを、川名さんから再度問われているように感じます。また、次年度も構想中ですので、課題が少しでもよい方向に進むために、本気にふれる場作り、ふれるきっかけ作りを今後も行っていきたいと思っています。


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