オンラインシンポジウム「地域と文化芸術の未来を考える~福井と丸亀の事例から~」

2020年6月28日(日)
13:30~17:00

文:荒川裕子(NPO法人福井芸術・文化フォーラム)

オンラインシンポジウムを終えて

福井芸術・文化フォーラムは、設立以来20年にわたり福井市の文化振興の一端を担ってきたが、拠点である福井市文化会館の閉館等、周囲の環境が大きく変化するいま、今後の福井の文化政策についての議論をひらく必要性を感じシンポジウムを開催した。

専門家のレクチャーや他県の行政の担当者から、自治体における今後の文化政策、市民会館建設に向けての取り組みを学び、今後わたしたちフォーラムが、どう行政とパートナーシップを組み、福井の文化芸術の環境をどう豊かにしていくかを考える契機とした。

当日は、zoomでの参加者46名、フェイスブックでのライブ配信視聴約50名、またライブ配信の動画再生回数も10日あまりで約1,500回と、当初の予想を越え多くの方に参加いただいた。終了後、SNSへの感想のコメント、登壇者へ直接の感想を送っていただくなど、大きな反応があった。地元紙である福井新聞に7月1日から4日間にわたりシンポジウムの内容も紹介された。

シンポジウムでは、文化芸術の存在意義について文化芸術関係者と一般市民では意識の差があることを問題視した。

それはどういうことかといえば、文化芸術が公的に支援されていても、愛好家や従事者など特定の人のものになりがちで、どちらかといえば閉じてきた分野であり、多くの市民にとって文化芸術は身近なものではない。今後はもっと文化芸術関係者は視野を広げていく必要があり、それは、様々な社会課題が山積みの中、文化芸術の多用な価値をもって社会課題にアプローチすることで、文化芸術があらゆる人々にとって必要なものであると支持されるためである。

文化芸術は消費ではなく人々への投資と捉え、よりよい社会を構築するための公共財となり得るのである。文化芸術のコミュニティをつくる力をもって医療、福祉、教育、まちづくり等、様々な分野との有機的な連携をはかることが豊かな地域社会への確実な一歩となっていくだろう。

シンポジウムから2ケ月が経ち、ウィズコロナ時代の文化芸術という大きな制限もあるなか、今後はどうアクションしていくのか、企画担当者として考えてみた。

 

応援される文化芸術へのシフトチェンジ。
自己完結から他分野との協働へ。

コロナウイルスはあっという間に世界中に蔓延した。感染から身を守る手段として、人と人の物理的な距離を保つ“ソーシャルディスタンス”は生活の全てに重くのしかかっている。新しい生活様式は、文化・スポーツ・エンタメの風景を一変。スポーツ観戦では声を出しての応援の代わりに手拍子や拍手。コンサートではオンライン配信が圧倒的に増え、テレビ番組ではアクリルの仕切りが設置されている。演劇やダンスといった舞台芸術においても当たり前にできたことはできない、困難な状況が続いている。

当フォーラムの例で言うなら、毎年4月に行っている舞台公演がある。障害のある人を真ん中において太鼓やダンスの発表を15年間、実行委員会形式で行っている。例年4月の公演が終わり、夏頃から実行委員会は次の公演のための準備をする。しかし今年は2月の末の練習で打ち切り、公演を翌年の3月に延期した。

公演の日程は決めたものの、新しい生活様式の中でどう舞台公演をしていいのか、誰もが分からない。中止も選択肢にいれた実行委員会での話し合いの中で、「できる範囲でやる」という結論に至った(40名近い人々が舞台で踊ることは難しいという判断を行い、チーム制を導入。10人程度のチームを何グループかつくることで密を回避するというもの)。

「やる」という決断に導いたのは、参加者の熱意に他ならない。「はやく練習したい」「いつから練習するの」というたくさんの声が実行委員会を動かした。いざ「やる」と決めても、いろんなハードルがある。スタッフの緊張感や準備等の労力も大きいが、それでも「やる」というのは、この舞台公演からもらったものがあまりにも大きいからだ。

参加者の生活、いや人生の一部になっていること、舞台公演を通していろんな繋がりができたこと、普段出会うことのない人から様々な気付きを得たこと。私自身、人々の変化を目の当たりにし、その成果は、参加者数×15年=○○○ という数字に表わすことができない、大きなものであることを体感している。

この舞台公演は外から見ると「福祉」と「文化芸術」が連携していると言える。いま、様々な分野と文化芸術が結びつくことで、多様な価値が生まれ、波及効果が期待されていることは文化芸術関係者にとっては自明のことであるが、文化芸術関係者の間でも意識の差はあるということは、肌感覚で痛感している。

しかしながら、コロナ禍は、文化芸術にとってはその特性を大いに発揮する機会であろう。“ソーシャルディスタンス”いう抗えないものによっていっそう孤独・孤立は増える。孤独や孤立は様々な悪循環を生む。そのような状況の中で、文化芸術は人々の存在を癒し何か一筋の光になり、見知らぬ誰かと繋がることができる触媒だ。誰かと繋がっているという感覚は自身の力を引き出す。数字では表せない大きな力になる。

有機的な連携と理想を掲げても実践することは並大抵のことではないだろう。中間支援やコーディネーターの存在も必要だが、何よりも、実施していこうという思いがあるかどうか。思いを組織内で共有し継続的な実施ができるかどうか。

しかし、今だからこそ、文化芸術関係者は、何のために文化芸術があるのか、誰のために活動を行っていくのか、根本を問い、市民に応援される文化芸術をやっていかなくてはいけない。自己完結し予算を消化してきた従来の考えからシフトチェンジする機会として捉えることが必要だ。

福井発のオンラインシンポジウムではあったが、文化政策の将来をどう描くかは、どの地域も共通の課題であり、今後さらに活発に議論していかなくてはいけないことだと痛感した。


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