アクセシビリティ研修<聴覚障害者応対編>

視覚や聴覚に障害のある人が文化施設に安心して来られるための
アクセシビリティ研修

「聴覚」に障害のある方への応対編

2019年7月13日(土)
10:00~15:30
福井市民福祉会館 4階 ボランティアルーム (フェニックス・プラザ内)

福井県では昨年「手話言語条例」が、福井市では「福井市手話言語及び障がい者コミュニケーション条例」が今年の3月に制定され、手話の理解促進・啓発イベントも実施されるなど、手話に関心をもってもらう動きが出てきています。しかしながら、実際に聞こえない人と接する機会は、普段の生活ではそう多くはありません。今回の研修の参加者で、実際に手話を見た経験がある方はほとんどでも、聞こえない人と接したことがある方は半分くらいでした。

講師の廣川麻子さんのレクチャーの始め、参加者は聞こえないことのイメージをそれぞれが考え発表しました。発表したことを、研修の最後にもう一度見直し、聞こえない人への印象が受講前と後では変わったことを確認しました。聞こえないといっても、聞こえの程度は人によって様々で、手話ができる人もいればできない人もいる。コミュニケーション手段は、手話だけでなく筆談や身振り、空書などいろいろ。まずはどのようなコミュニケーション方法がいいのか、相手にお聞きすることが大切で、伝えたいという気持ちが、実は一番大事だということを共有しました。

今研修では、福井県ろうあ協会の事務局長・栗田健一さんと、福井県ろうあ協会青年部の熊野壮一郎さんに、ロールプレイをお手伝いいただき、また、お二人が文化施設に行ったときの経験談や、ろう者がすすんで文化施設に行くには、どのような配慮があったらいいのかを語っていただきました。

この研修の1年前に、社会福祉法人グローが行っていた「ボーダレスな芸術鑑賞のためのアクセシビリティ研修と作品鑑賞会」に参加しました。講師は廣川さんが務め、研修の終わりには、地元のろう者の女性が、「聞こえる友達からの情報で劇団四季を知り、興味を持ち行ってみたいと思っていたが聞こえないことで観劇を諦めていた。でも最近では公演サポートがつくということを聞いて、行ってみたい」ということを話されていました。

サポートがあるから聞こえる人と同様に楽しむことができる、聞こえない人への配慮がきちんと考えられていることへの安心感は、文化施設に行ってみたいと思わせる何よりの動機だと感じました。まずは、文化施設に対して心理的な距離が少しでも縮まるよう、この研修を通じて考えたことを自分の現場で活かしてもらえたらと思います。

(テキスト=荒川裕子)


講師の廣川麻子さん。NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワークで鑑賞サポートに関わる様々な活動をされています。

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午前は廣川さんのレクチャー。最前列には手話通訳士が2名座り、手話を日本語に通訳してくれています。

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福井県ろうあ協会の方々。午後のロールプレイでは「聞こえないお客さん役」として、また、福井に住むろう者として思うことなど、率直にお話しいただきました。

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参加者の自己紹介。文化施設の方をはじめ、手話サークルの方、福祉関係にお勤めの方など様々な分野の方に集まっていただきました。

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「聞こえないことへのイメージは?」それぞれ思いつくことを書いています。

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話あった内容を整理してペア毎にホワイトボードへ記入。

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そして発表。自分と同じ意見や違う視点からの意見など様々。他の地域の研修と比べ、福井では質問や疑問が多く見受けられたそうです。

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聞こえないと困ることでは、音の情報しかない場合、聞こえない人は情報をキャッチできないこと。そこに気づいていくことが大事。

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聞こえの程度も人によって様々。補聴器をつけているから聞こえているというのは間違った理解です。

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鑑賞サポートについて。せっかくサポートがついている公演があったとしても、聞こえない人に情報が届いていないとまったく意味がありません。どこに告知をするのかが大事です。

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関東圏の劇場では、鑑賞サポートも取り入れられてきています。字幕付きの公演、舞台手話通訳付きの公演など。

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2018年6月に制定された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」から。

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これは貴重。指文字のクリアファイル!

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午後はロールプレイ。「筆談できます」のボードをお見せして、コミュニケーション方法を確認します。

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電子メモパッド。一瞬で文字が消せるので筆談道具として便利です。

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参加者からの感想。筆談は思っていた以上に時間がかかるので、受付に1人しかいない場合、他のお客さんの対応と同時にできない等、やってみて気づくことがありました。

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2組目。お客さんは声でのやりとりはできないと気付くと・・・

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聞こえない方へは「文字の情報」が予め用意されていると便利。

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3組目。お客さんが指さした先には博物館でのイベントの情報が。何を尋ねているのか、内容を掴み、適切な返答を出すことを声を使わずに行います。

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お互いのやりとりにズレがなかったかを確認。尋ねた内容とまったく関係のない資料を提出されたことに困惑してしまった、ということでした。

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4組目。手話がわかる参加者も今回は手話を封印。身振りでやりとりします。

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コミュニケーションには目と目を合わせることが大事。

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参加者からの感想。見るのとやるのでは大違い。瞬時の判断力やチームワークが求められます。

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はっきりと表現することは大事。聞こえない人にとって曖昧な表現は誤解を生みます。

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熊野さんからのお話。豊岡市の博物館へ行った時に、スタッフの方の応対がすばらしかったというお話しでした。

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栗田さんからのお話。聞こえない人は「見ること」からしか情報を得られない。「筆談できます」という掲示をするなら、カウンターの目立つ場所にあると安心するし施設に行ってみようという気持ちになる。

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今回の参加者は「視覚障害者応対編」も参加されていた方も数名いらして、参加者同士とても打ち解けていました。

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手話通訳さん。廣川さんの手話を日本語へ通訳。

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手話通訳さん。参加者の日本語を手話へ通訳。

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手をひらひらさせる動作は、聞こえる人の「拍手」。聞こえない人の世界ではよく使います。

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研修終了後も通訳なしでコミュニケーションをとっていました。

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長時間にわたる研修でも、みなさん積極的に参加していただきました。聞こえない人へのイメージや間違った認識など、たくさんの気づきがありました。

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